第九聴き比べ(その8)

9ラトル

9.1序

2枚だけだが、ラトルであればバーンスタインのすぐ後でも十分に太刀打ちできるだろう。過去記事はこちら。

 

 

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8.2聴き比べレビュー

Simon Rattle, Wiener Philharmoniker, City of Birmingham Symphony Chorus. Barbara Bonney , Birgit Remmert, Kurt Streit, Thomas Hampson (2002).

賛否両論ありそうな演奏。全体としては割とゆっくりめのはずなのにあまりそう聞こえない(ところどころ追い立てたりする)1楽章、やっぱりここを激しくするよねえという2楽章、美しいけど醒めてる3楽章と進んで、最大の特徴は4楽章の合唱だろう。少人数でキレの良い響きにする感があるが、ある意味それを最大限に活用して、強弱を思い切り明確につけている。最も分かりやすいのが880小節、特に887小節からの強弱の付け方。Welt!の部分だけ異様に強調されているようで突飛な感じもするが、そのおかげで緊張感が出ている。

Simon Rattle, Berliner Philharmoniker, Rundfunkchor Berlin. Annette Dasch, Eva Vogel, Christian Elsner, Dimitry Ivashchenko (2015).

ウィーン・フィルとの録音に比べると、1楽章は2分も速くなっているなど、テンポ設定は明らかに違う。キビキビというよりガシガシと追い立てられる感じ。ついでにいうと、ティンパニの音も傾向がだいぶ違う。もっとも、4楽章の合唱の強弱の付け方や強調部分は、ウィーン・フィルとやりたい放題やった成果をおとなしくして取り込んだ感じである。

8.3総評

どちらが良いかというと難しい。ウィーン・フィルとの録音が単発でやりたい放題の実験をして、ベルリン・フィルとの録音はオケを預かる指揮者としてより大人な演奏を志向したという感じである。それにしてもウィーン・フィルで実験、ベルリン・フィルにその成果というのは贅沢な話であるが、それにもかかわらず、ティンパニやトランペット、オーボエの音といったウィーン・フィルらしさは消えないのも大したものである。

第九聴き比べ(その7)

8.バーンスタイン

8.1序

SP1000Mのレビューで少し中断してしまったが、第九聴き比べの続き。今回はバーンスタインの3枚。過去記事はこちら。

 

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8.2聴き比べレビュー

Leonard Bernstein, New York Philharmonic Orchestra. Martina Arroyo, Regina Sarfaty, Nicholas Di Virgilio & Norman Scott(1976).

引き締まった演奏。以前はそれ以上の印象がなかったが、古楽に影響を受けたスタイルではなく、思い切りモダン楽器の演奏なんだけどもキビキビと無駄がないというのはこのあたりに端を発しているのかもしれない。

なんとこの時の使用楽譜と思われるものがNYPのサイトにアーカイブされている。

archives.nyphil.org

スコアだけでなくパート譜も。2楽章でどうも妙な音が聞こえると思ったら練習番号IとUのところで、トランペットに木管と同じ動きをさせている。マーラー版と同じだろうか?ちなみに、なんとマーラーがNYPを振った際のスコアもアーカイブされている。さすが記録を残す(+デジタル化する)ことにかけては凄まじい国である。

archives.nyphil.org

Leonard Bernstein, Wiener Philharmoniker & Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor. Gwyneth Jones, Hanna Schwarz, René Kollo & Kurt Moll (1979).

当然CDも持っていたが(学部生の頃に買ったので相当昔である)、24bit/192kHzのリマスタリング版の全集が出ていたので飛びついた。飛びつきすぎて、なんとデータ配信で初めて二重買いをしてしまった。警告してくれないのかHD Tracks(笑)。まあCDの頃は色々なものを二重に買ってしまっていたので、だいぶとマシにはなった。

さて、演奏はというと、3楽章はまるでマーラー5番の4楽章を神々しくしたようなバーンスタインらしい演奏であるが、全体としては、意外と(?)古典的な響きで、無駄にスケールがでかいわけではない*1。もちろん、1楽章中間部のトランペットのF(326小節)や、その後のチェロの動きなど、強調してほしい部分はどかんと強調する。何より、響きを抑えた独特の音のティンパニが大活躍する2楽章がとてもよい*2

Leonard Bernstein, Symphonie-Orchester des Bayerischen Rundfunks und Mitglieder Staatskapelle Dresden, Orchester des Kirow-Theaters Leningrad, London Symphony Orchestra, New York Philharmonic & Orchestre de Paris. June Anderson, Sarah Walker, Klaus König & Jan-Hendrik Rootering (1989/12/25.)

有名なベルリンの壁崩壊を記念した1989年12月25日のバーンスタインによる第九。CDの裏表紙によると、オケはバイエルン放送響に上記4つのオケのメンバーを加えたもので、歴史的な記念でもなければなかなか実現しない組合せだろう。かなりゆっくりとしたテンポで、粗がないわけでもないが、4楽章の器楽による歓喜の歌の部分と、FreudeをFreiheitに変えた歌の部分はさすがに感動的である。どこがどう、と講釈垂れるのが無粋になってしまう一枚なのでこの辺で。

8.3総評

甲乙つけがたいというよりも、演奏スタイルや意味合いがあまりに違うので比べるのも結構難しい。それにしても、海外慣れした人が「ハワイなんてベタ」と言いつつ行ってみると楽しんでるのと似たような感じで、やっぱりバーンスタイン素晴らしいよね、と。カラヤンではこうは思わない。

 

*1:例えば、同じウィーン・フィルとのブルックナー9番やシベリウス2番のような演奏を期待すると、ちょっと違う。チェリビダッケもそうなのだが、他の作曲家でダイナミックでスケールの大きな演奏をしていても、ベートーヴェン9番は違う、ということは結構ある。

*2:なぜか、特にこの録音の2楽章は「年末」という感じがする。

SP1000Mレビュー(その3・完)

SP1000Mのレビューその3。今回は音質について。

その1・その2はこちら。

 

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7.音質、聴いた印象

トータルで少なくとも100時間、色々なフォーマットの音源を聴いてみた。主に使用したのはAKG N5005(付属の2.5mmバランスケーブル)で、特記しない限り、これを使った感想である。

7.1全体的な印象

セットアップ後、初めて聴いてみた際に感じたのは、すさまじい音が鳴るというよりも、音の周りのフワッとした空気感まで繊細に伝わる優しい音という感じであった。メロディやハーモニーを構成する音はもちろん、その周囲の音楽とそうでないものの境界とでもいおうか。聴いていたのがBCJのクリスマスアルバム*1という合唱だったのも影響しているかもしれない。Ivan Fischerのマーラー2番を聴いてみると、5楽章の冒頭の騒がしい部分が一段落して、次の派手などんちゃん騒ぎ(怒りの日のメロディーでクライマックスを迎える)に移る途中の静かな部分で、低弦やドラ、大太鼓の反響が音としてだけでなく、実感をもった感覚として伝わってくる。

いずれにせよ、迫力はもちろん出せるのだが、始終迫力のある音がガンガン伝わってくるというよりも、優しい音がフワッと鳴る感じである。感覚の話なので言葉で伝えるのは難しいが、ふと気づいた場面を挙げると、雑踏などの周囲の音がある程度ある中で聴いていると、KANNでは音量が大きくなる場面で周りの音が耳に入らないのに対して、SP1000Mでは、周りの音に溶け込んで聞こえる*2。この意味で、「聴き疲れしない」「自然な」音というのは正しいだろう。ただし、ありきたりな表現(だからこそ伝わる部分はあるが)で、ほかの「聴き疲れしない」よく見かけるモニターライクという評価も、味付けが薄いという点では間違っていないだろうが、この優しさ・繊細さを捉えた表現ではないようにも思える。

7.2音の鳴り方と音場

KANNなどのプレーヤーは、割と耳の近くで迫力のある音をある程度の解像度で鳴らすという感じ(SE100もそうらしいが聴いたことはない)なのに対して、SP1000Mはもっと広い空間を使い、余裕をもって鳴らすという感じがする。そのため、前者のような環境に慣れた人にとっては、音量を上げないと、キレイな音ではあるが遠くから聞こえるという感覚になるかもしれない。もちろん、迫力が出るべき場面ではきちんとドカンとやってくれるが、これも耳の近くというより、周囲を含め全体が、どん、と鳴る感じである。

ただ、このくらいの価格帯のプレーヤーは、実は音量をあまり上げなていない状態の聞こえ方が大きく違うように思っている。たとえていうならば、音量を半分にしても、きちんと半分のサイズでダイナミクスが描かれ、音楽に浸れる。他方、近くで鳴るタイプのものは音量を半分にするとスケールは半分未満になってしまう。

音場については、左右方向は結構広い(感覚的には180度+α)が、壮大というほどでもなく(SP1000の方が広いのかもしれない)、他方で、前後方向の広さに驚く。在る楽器がセンターより少し左から聞こえるというだけでなく、左の指揮者より少し奥といった感じで聞こえる場所がつかめる。

7.3「解像度」

聞こえてくる音は極めてクリアで、一般的にいわれる「解像度」は高い。KANNでDSD64を聴いた際の解像度に微妙な不満を持っていたが、SP1000Mで聴くと完全にこの不満は解消された。管楽器や独唱が音を響かせている後で微かに鳴っている弦楽器のpの刻み、フルートやオーボエが弦楽器や独唱に小さく重ねる僅かな音もクリアに聞こえて楽しい。こうした観点から、SP1000Mで聴いてみて楽しい録音として、沼尻竜典・都響の近衛秀麿編曲「越天楽」である。笙のようで笙ではない弦楽器の音など、解像度の高さがあってこそ楽しめる*3

こうした解像度の高さは何もDSDやハイスペックなPCM音源、あるいはそもそもきれいに録音された音源のみならず、普通のCD音源や、ノイズの多い古い音源を聴く際にも役立つ。最初はあまり解像度が高いと、ノイズ部分もはっきりクッキリ美しく聞こえるのではないかと妙なことを考えたが、実際はそうではなかった。古い音源で、環境によってはノイズに埋もれてしまう微細な楽器の音もきちんと再生してくれる。

解像度が高いからこそ、前述の優しい傾向のフワッとした音が活きてくるといえるだろう*4

 7.4高音や低音

高音は伸びが良く、強くなってもキツさがない。上質の絹やベルベットの手触りようなという月並みな表現がしっくりくる音である。特に、バイオリンや高音成分たっぷりのピッコロ・トランペットの音はいつまでも聴いていたくなる。
低音はもう少し評価が分かれるかもしれない。大太鼓やオルガン、コントラバスの強奏はズンと腹の底から響いてくれるのだが、割とあっさりと音が引く。個人的には、あまり長く低音の響きが続くと次の音が濁るというかぼわんとして好きではないので、このくらいあっさりしている方が好きである。ただ、低音がズンドコと響いた方が楽しい類の音楽があるのも事実で、そうしたジャンルが好きな人には物足りないかもしれない。

 

8.イヤフォンなどとの相性

前述のとおり、N5005を主に使っている。そのほかに、少しだけK812、Meze 99 Classics (Walnut Gold)とFinal Sonorous vi(いずれもMezeの2.5mmバランスケーブル)も使ってみた。聴き比べてみた結果、N5005が抜群の相性の良さを示した。

ほかには、Sonorous viも結構相性は良かった。元々、じゃじゃ馬のようなヘッドフォンで、左右が少しでも乱れているとものすごく雑に聞こえるのだが、SP1000Mではしっかりと固定された音になっていた。

他方、99 Classicsはイマイチ相性が良くなかった。このヘッドフォンは、全体的にはクリアだがうまく音を「丸める」傾向があって、音楽番組の視聴などの際にアンプを通して聴くのに重宝している。ただ、SP1000Mと合わせると、これが災いとなるのか、繊細さが失われてどうにもチグハグな感じになってしまう。

K812は音の傾向としては非常に相性が良いが、音場は据え置きで使っているアンプと比べてやや狭くなる印象であった。まあアンバランスしかないし。

アンプの力を考えると、そこそこインピーダンスが高いイヤフォン・ヘッドフォンでも鳴らせるとは思うが、HD800あたりになると単独で使うのはキツいのではないかと思う。

 

9.おわりに

以上をまとめる。(1)サイズや重さはポータブルに最適で、携帯電話が軍用無線のようなサイズからポケットに入るサイズになった時代のように、現実的に使えるポータブル・オーディオになってきている。(2)バッテリーの「もち」はあまり良くないが、UIを含めて使い勝手は良い。真ん中の本体キーの意味不明な挙動以外、これといったトラブルはない。(3)音質はフワッと優しく、繊細である。解像度はとても高い。低音の評価は分かれうる。

全体的に私自身は大変満足している。ただ、音質面では、上記のとおり低音の鳴り方に加えて、SP1000Mの基本的な傾向である繊細で優しい音というのがその人の求める音であるかどうかで評価は大きく異なるだろう。

使っているうちに他に色々と湧いてくることもあると思うが、これで一応レビューは完成ということにする。

*1:ハイレゾ版も色々なストアで配信されている。今回聴いたのは24bit/96kHz flac

*2:同じイヤフォンを使っているので遮音性の話ではないはずだ。

*3:ライブではそこそこ楽しい現代音楽でも、録音で聴いたらつまらないというのはよくあるが、もしかしたらこのくらいの環境では楽しく聴けるかもしれない。

*4:解像度が低く優しい音だと、「味のある」微妙な真空管アンプみたいになるかもしれない。

SP1000Mレビュー(その2)

前回はこちら。今回は大きさ、UI、その他の使い勝手などについて。

 

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 4.大きさ

前回も触れたとおり、SP1000MはW67.9×H117×D16.9(mm)、203gとかなり小型・計量である。iPhone XがW70.9×H143.6×D7.7(mm)、174gなので*1、一回り小さく、かなり分厚いスマホのような感じである。手持ちのDP-X1A(W75.9×H129.0×D12.7mm、205g)*2と比べてみると、以下のように少し小さい。

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DP-X1A(左)とSP1000M(右)

ちなみに、SP1000Mの約2ヶ月後に発売されたCOWONのフラッグシップPlenue Lもほぼ同じサイズ(W67.9×H119.1×D16.5(mm)、199g)*3、Cayin N8がW70×H128×D21(mm)、380g

*4

、LotooのPAW Gold TouchがW68.6×H119×D21(mm)、311g*5と大きさはさほど変わらず、やや分厚く、重めとなっており、重さはアンプやバッテリーなどで結構変わるが、大きさはある程度揃ってきた感じである。

この時期なのでシャツのポケットのほかに、コートの内ポケットに入れてみると、DP-X1Aなどと比べた「少し」の差は結構大きい(夏場はポケットの数が減るので余計に大きい)。相変わらずスマホほど薄くなっていないものの、サイズとしてはポータブルとして実用的なものになってきたといえるだろう。重さも200gくらいであればケースをつけたスマホくらいなので十分である。

5.UIなど

5.1ソフトウエア周り

UIは引き続きAK独自のもので、慣れていれば戸惑うことはない。KANNと比べると、「フォルダ」にアクセスすると、内部ストレージとmicro SDの使用容量がグラフで表示される(以前は単にディレクトリが表示されるだけ)。細かいが改善点だろう。

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フォルダ画面

UIの動作はキビキビしていてストレスはない。また、スキャン速度も結構早い。上記の写真より少し少ないデータで使用を始めたが、最初のスキャンに少し時間がかかったくらいで、その後は特にストレスを感じることはない。

再生中などは画面にフローティングの「戻る」ボタンが表示される。これはこれで便利なのだが、一体どこに「戻る」のかイマイチ基準が分からない。個人的には、再生中のファイルが含まれているディレクトリに行ってほしいのだが、そうなるときもあれば、もっと前の画面に戻ることもある。

5.2ボリュームホイール、本体キー

ボリュームホイールは操作しやすい。本体から僅かに出っ張っているだけなので、ポケットに入れていても誤作動することがない。他方、ポケットに手を突っ込んで(本体を取り出さず)、音量を上げ下げすることも一応できる。本体を出し入れすると落とす可能性があるので、こうでなくては困る。

やや微妙なのが本体の左横に付いた本体キーである。以下はケースをつけた状態の本体キー部分。

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SP1000M本体キー

説明書によれば、上から順に「前/巻き戻し」「再生/一時停止」「次へ/早送り」である。説明書を読む前からそうだろうなと思って、再生中の音楽を止めるために真ん中のキーを押してみると、なんと次の曲(楽章)に。あれ?と思って次に試すと曲の冒頭に戻る。これが何のキーなのか分からなくなり、説明書で確認した上で、非常に注意深く真上から真ん中のキーを押すと、確かに一時停止。本体キーの感覚が狭いからなのか、ケースの設計の問題なのか、ケース上からだと真ん中のキーが誤作動することがあるようだ。

これだけであれば使わなければよい。しかし、どうやらボリュームホイールはロックできるが、本体キーはロックできないようである。そのため、ポケットに入れる、出す際に、第9の3楽章のファンファーレが来るなと思っていたら4楽章のファンファーレが始まった、といったことが時々起きる。これは困るのでどうにかしてほしいなあ。

6.その他の使い勝手:バッテリーなど

総じて使い勝手は良い。ポータブルで良い音質で、使い勝手良くという購入目標は達成できている。いくつかの項目に分けてみてみよう。

6.1バッテリー

SP1000Mは、SP1000と比べてバッテリー容量が少し小さい*6。SP1000は3700mAh/3.7Vなのに対して、SP1000Mは3300mAh/3.7Vで、公称の連続稼働時間はそれぞれ12時間、10時間である。

公称どおりであれば1時間に10%ずつ減っていく感じであるが、実際のところはどうか。測定条件どおりの条件で使うことは考えにくい*7が、1時間に10%より少し大きく減る。具体的には、音源のスペックや音量により、10%から最大15%という感じで、平均するとおおむね11-12%程度だろうか。一割違うと測定としてはずぶずぶだが、実用上は8〜9時間程度は充電なしで使えますよということなので、まあまあ許容範囲である。実際、通勤+αくらいであれば2、3日充電しなくてもなんとかなるという感じで使っている。KANNのバッテリーが6200mAh/3.7Vと巨大なので*8、最初のうちは減る速さに驚いたが、KANNが異様なのであって、Plenue Lあたりと比べても*9SP1000Mが特に弱いわけではない。

なお、USB-C→Aの変換ケーブル(付属のもの)を使ってパソコンにつなぐと、もちろん充電できるのであるが、ファイル転送を行っていると、消費>充電となってゆるやかにバッテリー残量が減っていくあたりは要注意。

6.2 micro SD関連

Micro SD関連は色々と懸念があったのだが、大した問題は起きていない。現在はSandiskの400GBを入れている。最初の方に、SP1000MをMacにつないで音楽データを転送してからusbケーブルを外した直後にmicro SDを読み込めない症状が2回ほど出た(再起動すればなおった)。しかし、最新のアップデートの影響なのか、その後はこうした症状は出ない。

また、一度(適切に)外したカードを再度挿すと「破損している」旨が表示されるとか、実際にデータの一部が欠けてしまうなど、AKの色々な機種は(micro)SDカード周りのトラブルがあった(私もKANNで何度も経験した)。頻繁にmicro SDを抜き差しするわけではないが、今のところSP1000Mではこの手のトラブルに遭遇していない。

AKに限らず、Andoroidベースのプレーヤー(スマホも同様だが)は、MacとのMTPモードでの接続がうまくいかないことが多くあった(何度かケーブルを抜き差ししているうちにやっとどうにかなる)。しかし、SP1000Mでは今までのところ、どのMacでも一発で認識される*10。ただし、USB-Cを採用しているにもかかわらず、USB2.0しか使えず、転送速度は相変わらず遅い。急速充電には対応しているものの、これではせっかくtype-Cを採用している意味が半減してしまう。このあたりのiriverの保守性はよく分からん。

※2019/01/11追記

USB3.0については、iriverのウエブサイトでは「USB3.0(Type-C)をサポート。急速充電、高速データ転送に対応」と記載されているのに対して、マニュアル8頁では、「Windows と MAC のどちらでも、本製品は USB 2.0 でのみ動作します。」と書かれている。Macにつないでみると、USB2.0で認識されていた。転送速度をみれば体感的にも分かるのではあるが。

これに関連して、USB3.0のハブを使う場合、ハブによってうまく認識されたりされなかったりすることがあるようだ。手持ちのものではAnkerのUSB3.0対応ハブでは毎回きちんと(2.0で)認識されている。

6.3ケース

ケースの質感は良く、手触りも良い。滑りやすい素材でもないので、外出先でも安心して使えるのは嬉しい。細かい問題ではあるが、ケースによってmicro SDカードのスロットが覆われてしまうので、カードを入れ替えるにはケースを外す必要がある。そして、引っかかりのないデザインで、かつ、ピタッと本体に密着するサイズなので、ケースを外すのはちょっとした手間である。もちろん、iriverはケースの外し方を懇切丁寧に説明書に書いてくれるような企業ではない。USBケーブル用の穴からとがっていないもので押し出すのが一番楽だろうか。そんなわけで、micro SDを外出先でとっかえひっかえという使い方はちょっと厳しい。サードパーティーのケースが出たら別かもしれないけど。

今回はこのあたりで。次回は音質など。

*1:Xs, XsMax, XRはもう少しずつ大きく、重い。例えば、製品の仕様 | iPhone | NTTドコモ参照

*2:オーディオ&ビジュアル製品情報:ヘッドホン>DP-X1A|オンキヨー株式会社

*3:[ Welcome to COWONJAPAN.com ]

*4:CAYIN N8|KOPEK JAPAN

*5:PAW Gold TOUCH 詳細 | Lotoo JP

*6:小型化に伴った必然的なものか、SP1000と差をつけるためなのかはともかく。400mAhしか差がないし、最近のバッテリーの小型化を考えると後者じゃねえかなあとも。

*7:ちなみに、iriverの測定条件は「ボリューム75, EQオフ, 画面オフの場合」である(https://www.iriver.jp/products/product_176.php#2)。どんだけインピーダンス低いイヤフォンor音圧上げた音源やねん。

*8:KANN|iriver Japan

*9:3050mAh/3.7Vで、24bit/96kHzのflacで連続再生時間8.5時間。http://www.cowonjapan.com/product_wide/PLENUEL/product_page_4.php

*10:なお、私はAndoroid File Transferというクソアプリは使わず、Commander Oneというものを使っている。

SP1000Mレビュー(その1)

1.はじめに

少し前に、つい魔が差してSP1000Mを買ってしまった。ふらふらっと。

犯行の予兆はあった。普段持ち歩いているKANNは耳元でパワフルに鳴ってくれるが、ちょっと解像度や繊細さは足りない。特にDSD64の音源で、音がいやに丸まって聞こえる。それにでかい。かといって、DP-X1Aをアンプとつなげると、DSD変換でとても良い繊細な音が鳴るのだが、バッテリーはすぐなくなる。そしてでかい。ポータブルに適したサイズで、音はとびきり良くて、繊細で、「これでダメならまあ音源が悪いわな」と諦められるものはないのかという謎の欲求不満に陥ってアレコレとみていた。

「お、Pleneu Lかあ。音良さそうだし、DSD256対応してるし…ううむでもバランスが4.4mmかあ、まあケーブル変えればいいか*1、しかし値段が微妙だなあ」「SP1000はでかいよなあ、しかも値段はもう」「Cayin N8、ううむSP1000と同じくらいやんけ」「ソニーのえげつないやつ*2、すげえなあ。聴いてみたいけど戻ってこれなさそうだし、95万なんて買えるか!」などなど。それから、どれもmicro SDが1枚しか入らない。KANNもDP-X1Aもmicroか普通のSDかはともかく、2枚入るのだ。

店頭で発売直後のSP1000Mをみかけて、「これが少し安くなってこのくらいになったら危険だな。見ないことにしよう」と調べずにいたのだが、某所でまさにその値段で出ているのを見つけてしまった。「税抜きならやめておこう」と思ったら、税込みである。悪魔がささやく。「買ってまえ」「そのくらいで破産するわけでもなし」。

買ってしまった。

そうなったら仕方がない。使い倒して元を取ろう。

2.基本スペック

スペックはiriverの製品紹介ページをみていただきたい。

www.iriver.jp

音質に関わるハード面は基本的にSP1000と同じである。最も違うのはサイズと重さで、上記サイトによれば、SP1000MはW67.9 x H117 x D16.9(mm)、203gである*3。実際、最初に持った際の印象は「軽い!」であった。また、バッテリー容量と内蔵のメモリ容量も小さくなっているので、これらも使い勝手を評価する際にみることとする。

3.外観と大きさ、重さ

箱はこのような感じで、KANNよりも高級感はある。

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外箱

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内箱

これを開けると、本体と付属品として保護シート、カバーが入っている。

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本体+保護シート

保護シートが妙にたくさんあると思ったら表だけでなく裏面用のものもそれぞれ2枚ずつあった。ちなみに、裏面はこんな感じなので、確かに保護シートはほしい。



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本体裏面

そしてケース。

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ケース

ケースは表面側が2mm弱、裏面側が2.5mm程度なので、装着しても厚みが増えた感じはあまりしない。ケースを装着してイヤフォンをつけたらこんな感じになる。

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本体+ケース

写り込みをぼかすために変な色目になっているがご容赦を。ケースの手触りはよく、USB-Cの部分に穴が開いているほか、サイドボタンの部分はケース上から押せるようになっている。本体だけよりも滑りにくい。というか本体のままだと傷がつくだけでなく、滑りやすいのでなかなか怖い。

次回はサイズ感を含む使い勝手、その次は音質面ということで、今回はこのへんで。

*1:といってもN8も4.4mmを採用しているし、もしかしたら流れが変わりつつあるのかもしれない。実際、2.5mm4極は、音質面はともかく物理的に脆弱であることは確かだ。

*2:DMP-Z1

*3:他方、SP1000 (stainless steel)はW75.8 x H132 x D16.2(mm)、386gである。

第九聴き比べ(その6)

7.アバド

7.1序

さすがに他の人と混ぜるのも失礼(?)なので、2つだけだが「その6」ではアバドを。

過去記事はこちら。

 

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7.2聴き比べレビュー

Claudio Abbado, Wiener Philharmoniker & Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor
Gabriela Beňačková, Marjana Lipovšek, Gösta Winbergh & Hermann Prey (1986).

先に下記のベルリンフィルの録音を聴いていたので、アバドの第九ってこんなに力強いのか!と驚いた。伝統的なスタイルから離脱しているが、最近のものとも異なるとても魅力的な演奏で、アバドのでかい曲を指揮するうまさが出ている。カラヤンとえらい違いやな。

Claudio Abbado, Berliner Philharmoniker, Schwedischer Rundfunkchor & Eric-Ericson-Kammerchor. Karita Mattila, Violeta Urmana, Thomas Moser & Thomas Quasthoff (1996).

美しく研ぎ澄まされた演奏の極地の1つとでもいうべきだろうか。録音も素晴らしい。各パートがきれいに整理され、小気味よいテンポで進むのだが、一部の古楽スタイルの演奏のように淡々としているわけではない。1986年のものとは異なった形の、しかし、アバドらしい熱のこもった演奏である。

 

7.3総評

2つで総評もなにもないのだが、やっぱりアバドはイイ。演奏スタイルを大きく変えても違う魅力を出せるという柔軟性も、引き出しの多さもさすがというほかない。

第九聴き比べ(その5)

6.クレンペラー、クーベリック、ヴァント

6.1序

もはやドイツ系オケという括りもできないが、とりあえずはこの3枚。

過去記事はこちら。

 

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 6.2聴き比べレビュー

Otto Kremperer, Philharmonia Orchestra & Philharmonia Chorus. Aase Nordmo-Lovberg, Christa Ludwig, Waldemar Kmentt & Hans Hotter (1957).

これも、クリュイタンスの録音と同様に、最初はつまらんと思っていた演奏。月並みだが、特に古い録音は聴く環境で良さが分かったり分からなかったりしやすいのだろう。ドイツ系のオケではないが、ドイツの伝統的なスタイルっぽい演奏である。低弦、特にチェロがしっかり聞こえることもあり、重厚な躍動感のある2楽章になっているのがよい。他方、2楽章は重厚さはあるもののややあっさりしている。細いところで色々な特徴のある演奏で、例えば、3楽章の最後、ぽん、ぽんがずいぶん目立って特徴的である。また、録音のせいか、オーボエの音が金属的でえらく飛び出てくる感じがする。4楽章では器楽部分の管楽器による歓喜の歌でいきなりテンポが少し速くなる。ついでに、ところどころズレかけている(4楽章870小節付近のティンパニが飛び込んでいるとか)。

 

Rafael Kubelik & Chor und Symphonie Orchester des Bayerischen Rundfunks. Helem Donath, Teresa Berganza, Wieslaw Ochman & Thomas Stewart (1974).

テンポがとりたててゆっくりというわけではないが、最も濃厚な類の演奏である。4楽章の器楽部分をはじめ、第2トランペットがとても強い(あまりに堂々と「オレを聴け!」と存在感を主張するので、そちらに耳を奪われる)。トランペットに限らず、下のパートの支えが強いのも濃厚さに寄与しているのだろう。伝統的なスタイルの演奏では、イッセルシュテットと並んで好きな演奏である。

Günter Wand, NDR Sinfonieorchester, Chor Der Hamburgischen Staatsoper & Chor der Norddeutschen Rundfunks. Edith Wiens, Hildegard Hartwig, Keith Lewis & Roland Hermann (1986).

なんのことはない「普通」の第九と思っていたが、久々に聴きなおしたらとんでもない勘違いで、素晴らしい演奏であった。録音も良い。ヴァントらしく無駄はないのだが、雄大な部分はしっかりとスケール大きく、細かいところも行き届いている。別に楽譜の改変なんかしなくてもスケールの大きな演奏はできるという好例である(改変したのはそれはそれで好きなのだが)。

6.3総評

最近のキレの良い第九にも好きなものはいくつもあるが、1970年代〜80年代のでかいオケで思い切り響かせる演奏も、ベートーヴェンの他の交響曲ならともかく、9番については魅力的である。やはりそれまでと非連続の変化があったというべきなのだろう。