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何かしらの余録

第九聴き比べ(その7)

8.バーンスタイン

8.1序

SP1000Mのレビューで少し中断してしまったが、第九聴き比べの続き。今回はバーンスタインの3枚。過去記事はこちら。

 

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8.2聴き比べレビュー

Leonard Bernstein, New York Philharmonic Orchestra. Martina Arroyo, Regina Sarfaty, Nicholas Di Virgilio & Norman Scott(1976).

引き締まった演奏。以前はそれ以上の印象がなかったが、古楽に影響を受けたスタイルではなく、思い切りモダン楽器の演奏なんだけどもキビキビと無駄がないというのはこのあたりに端を発しているのかもしれない。

なんとこの時の使用楽譜と思われるものがNYPのサイトにアーカイブされている。

archives.nyphil.org

スコアだけでなくパート譜も。2楽章でどうも妙な音が聞こえると思ったら練習番号IとUのところで、トランペットに木管と同じ動きをさせている。マーラー版と同じだろうか?ちなみに、なんとマーラーがNYPを振った際のスコアもアーカイブされている。さすが記録を残す(+デジタル化する)ことにかけては凄まじい国である。

archives.nyphil.org

Leonard Bernstein, Wiener Philharmoniker & Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor. Gwyneth Jones, Hanna Schwarz, René Kollo & Kurt Moll (1979).

当然CDも持っていたが(学部生の頃に買ったので相当昔である)、24bit/192kHzのリマスタリング版の全集が出ていたので飛びついた。飛びつきすぎて、なんとデータ配信で初めて二重買いをしてしまった。警告してくれないのかHD Tracks(笑)。まあCDの頃は色々なものを二重に買ってしまっていたので、だいぶとマシにはなった。

さて、演奏はというと、3楽章はまるでマーラー5番の4楽章を神々しくしたようなバーンスタインらしい演奏であるが、全体としては、意外と(?)古典的な響きで、無駄にスケールがでかいわけではない*1。もちろん、1楽章中間部のトランペットのF(326小節)や、その後のチェロの動きなど、強調してほしい部分はどかんと強調する。何より、響きを抑えた独特の音のティンパニが大活躍する2楽章がとてもよい*2

Leonard Bernstein, Symphonie-Orchester des Bayerischen Rundfunks und Mitglieder Staatskapelle Dresden, Orchester des Kirow-Theaters Leningrad, London Symphony Orchestra, New York Philharmonic & Orchestre de Paris. June Anderson, Sarah Walker, Klaus König & Jan-Hendrik Rootering (1989/12/25.)

有名なベルリンの壁崩壊を記念した1989年12月25日のバーンスタインによる第九。CDの裏表紙によると、オケはバイエルン放送響に上記4つのオケのメンバーを加えたもので、歴史的な記念でもなければなかなか実現しない組合せだろう。かなりゆっくりとしたテンポで、粗がないわけでもないが、4楽章の器楽による歓喜の歌の部分と、FreudeをFreiheitに変えた歌の部分はさすがに感動的である。どこがどう、と講釈垂れるのが無粋になってしまう一枚なのでこの辺で。

8.3総評

甲乙つけがたいというよりも、演奏スタイルや意味合いがあまりに違うので比べるのも結構難しい。それにしても、海外慣れした人が「ハワイなんてベタ」と言いつつ行ってみると楽しんでるのと似たような感じで、やっぱりバーンスタイン素晴らしいよね、と。カラヤンではこうは思わない。

 

*1:例えば、同じウィーン・フィルとのブルックナー9番やシベリウス2番のような演奏を期待すると、ちょっと違う。チェリビダッケもそうなのだが、他の作曲家でダイナミックでスケールの大きな演奏をしていても、ベートーヴェン9番は違う、ということは結構ある。

*2:なぜか、特にこの録音の2楽章は「年末」という感じがする。