6.クレンペラー、クーベリック、ヴァント
6.1序
もはやドイツ系オケという括りもできないが、とりあえずはこの3枚。
過去記事はこちら。
6.2聴き比べレビュー
Otto Kremperer, Philharmonia Orchestra & Philharmonia Chorus. Aase Nordmo-Lovberg, Christa Ludwig, Waldemar Kmentt & Hans Hotter (1957).
これも、クリュイタンスの録音と同様に、最初はつまらんと思っていた演奏。月並みだが、特に古い録音は聴く環境で良さが分かったり分からなかったりしやすいのだろう。ドイツ系のオケではないが、ドイツの伝統的なスタイルっぽい演奏である。低弦、特にチェロがしっかり聞こえることもあり、重厚な躍動感のある2楽章になっているのがよい。他方、2楽章は重厚さはあるもののややあっさりしている。細いところで色々な特徴のある演奏で、例えば、3楽章の最後、ぽん、ぽんがずいぶん目立って特徴的である。また、録音のせいか、オーボエの音が金属的でえらく飛び出てくる感じがする。4楽章では器楽部分の管楽器による歓喜の歌でいきなりテンポが少し速くなる。ついでに、ところどころズレかけている(4楽章870小節付近のティンパニが飛び込んでいるとか)。
Rafael Kubelik & Chor und Symphonie Orchester des Bayerischen Rundfunks. Helem Donath, Teresa Berganza, Wieslaw Ochman & Thomas Stewart (1974).
テンポがとりたててゆっくりというわけではないが、最も濃厚な類の演奏である。4楽章の器楽部分をはじめ、第2トランペットがとても強い(あまりに堂々と「オレを聴け!」と存在感を主張するので、そちらに耳を奪われる)。トランペットに限らず、下のパートの支えが強いのも濃厚さに寄与しているのだろう。伝統的なスタイルの演奏では、イッセルシュテットと並んで好きな演奏である。
Günter Wand, NDR Sinfonieorchester, Chor Der Hamburgischen Staatsoper & Chor der Norddeutschen Rundfunks. Edith Wiens, Hildegard Hartwig, Keith Lewis & Roland Hermann (1986).
なんのことはない「普通」の第九と思っていたが、久々に聴きなおしたらとんでもない勘違いで、素晴らしい演奏であった。録音も良い。ヴァントらしく無駄はないのだが、雄大な部分はしっかりとスケール大きく、細かいところも行き届いている。別に楽譜の改変なんかしなくてもスケールの大きな演奏はできるという好例である(改変したのはそれはそれで好きなのだが)。
6.3総評
最近のキレの良い第九にも好きなものはいくつもあるが、1970年代〜80年代のでかいオケで思い切り響かせる演奏も、ベートーヴェンの他の交響曲ならともかく、9番については魅力的である。やはりそれまでと非連続の変化があったというべきなのだろう。