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何かしらの余録

第九聴き比べ(その3)

4.フリッチャイ、イッセルシュテット、コンヴィッチュニー

4.1 序

思いつき第九聴き比べ第3回。ここからは順不同気味になってくる。とりあえず、1950〜60年代のドイツ系指揮者・オケといういい加減な括りでお許しを。

その1・その2はこちら。

 

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 4.2 聴き比べレビュー

Hans Schmidt-Isserstedt, Wiener Philharmoniker & Wiener Staatsopernchor Joan Sutherland, Mrilyn Horne, James King & Martti Talvela (1965)

伝統的な大時代的演奏の中では最も好きかもしれない。力強く、迫力がある。じゃんじゃかどんどんと鳴らすばかりの演奏とは全く違う一方、同時に出てくる各部の動きを抑えこんでしまわないので、それが迫力につながっている。要するに、カラヤンのようにごちゃっとしていないが、かといって妙に整理された演奏でもない。例えば、1楽章の中間部では、金管が圧のある長音を吹く上で高弦が第一主題と同様の動きをしているところ、低弦がゴリゴリと動いている。この低弦をキチッと聴かせているので、躍動感が生まれている*1。そんな演奏なので、もちろん2楽章も楽しい。

他にもNDRの録音などある模様。どっかで手に入れよう。

 

Ferenc Fricsay, Berliner Philharmoniker & Chor der St. Hedwig-Kathedrale Irmgard Seefried, Maureen Forrester, Ernst Haefliger & Dietrich Fischer-Dieskau (1957-1958)

伝統的なスタイルの演奏。リマスタリングされたハイレゾ版(24bit/96kHz)はかなり録音がきれい(CDも持っていたので比べた)。やや高音が強調された録音(というよりリマスタリング?)になっているが、ちょっとこの時期の録音とは思えない精度である。そして、バリトンはFischer-Dieskauで、さすがに聴き応えがある。声楽のソロはいかにも別録りをかぶせたようにも聞こえる*2が、Fischer-Dieskauのカラオケであれば聴く価値はあるだろう。

 

Franz Konwitschny, Gewandhausorchester Leipzig & Rundfunkchor Leipzig Ingeborg Wenglor, Ursula Zollenkopf, Hans-Joachim Rotzsch & Theo Adam (1959)

東ドイツのオケを1つ。録音のせいかリマスタリングのせいか、真ん中から残響音らしきものが聞こえる。なお、24bit/48kHzの(一応)ハイレゾ配信音源を聴いた。

ややゆっくりめの演奏で、東ドイツらしく柔らかい金管もあり、全体的にも暖かい音がする。昔の東ドイツのオケの録音は割とそういった傾向があるのだが、なぜだろうか。オケの音なのか、録音の影響なのか*3。全体的にややつまらない感も否めないが、4楽章器楽部分のコントラバスの歓喜の歌が妙に魅力的で素晴らしい。

 

4.3 総評

イッセルシュテットばんざーい!演奏、録音ともにこの中では最も良い(他のも含めてもかなり好きな方だ)。

*1:ベームの1970年の録音は好きだが、こうした聴かせ方はしない。

*2:音の響き方と左右の配置のほかに、4楽章のトルコ風行進曲の部分で、テノールのソロとオケのテンポが微妙に合っておらず、普通ならこう合わせていくだろうなという感じとは明らかに違って、一方的な調整がタイミングを変えて続いている。

*3:バッハなんかはトランペットが暗く、鈍さと鋭さの混ざった響きがするのだが、これは実際に生で聴いても(もちろん冷戦終了後ずいぶん経ってから)そうであった。