よろく

何かしらの余録

第九聴き比べ(その2)

3.(その2)ベーム

3.1 序

突然思いついた第九の聴き比べ(その2)

その1はこちら。 

yorokuyadoroku.hatenablog.com

 

今回はカール・ベームを3つ。いずれも伝統的なスタイル*1。今回の音源はいずれも配信で購入した。

3.2聴き比べレビュー

1963年:Karl Böhm & Chor und Orchestger der Bayreuther Festspiele. Gundula Janowitz, Grace Bumbry, Jess Thomas & George London.

※モノラル録音

1970年、1980年の演奏と比べても密度の濃い演奏。モノラルとはいえ録音は結構良い。例えば、4楽章の合唱の細かいところまで聞き分けられる(ただ、最後の方はシンバルとトライアングルがキンキンとくる)。特に3楽章の美しさは大したもので、なんでステレオにしなかったという感想*2

1970年:Karl Böhm, Wiener Philharmoniker & Wiener Staatsoper. Gwyneth Jones, Karl Ridderbusch, Jess Thomas & Tatiana Troyanos.

伝統的なスタイルだが、やや高音というか旋律部を押し出した上で、カチッと整理された演奏である。だからといってつまらないわけではなく、引き締まった良い演奏。例えば、1楽章の中間部はホルン・トランペットの長音を強調して印象に残る疾走感が生み出されている。テンポは次の1980年の録音よりも1955年のものに近い。

1980年:Karl Böhm, Wiener Philharmoniker & Konzertvereinigung Wiener StaatsopernChor. Jessye Norman, Brigitte Fassbaender, Placido Domingo & Walter Berry.

テンポがえらくゆっくりめになっている。ジュリーニと入れ替わったのかというくらい遅い(ジュリーニより僅かに録音時間が長い)。歳とるとゆっくりになる例その1。1970年の録音に比べても一層高音部が強調されていて、全体的に線が細い印象であるが、これは録音(というかその後の編集?)のせいもあるかもしれない。

 

3.3総評

トータルでみると1970年のものが一番好きである。かっちょええ。

*1:ここでは、比較的最近の楽譜に忠実な(しばしば古楽スタイルの)演奏と対比される、スケールの大きさと壮大さを目指したタイプの演奏。

*2:あいにく、私は、「モノラルがいいんだよ、モノラルが」という類のヘンタイではないが、下手な初期のステレオ録音より良いことは十分ある。